当方で扱っている主なアーチストについて簡単にご説明します。

スティーブン・ベガイ

シルバーを重ね合わせるオーバーレイ技法はホピ族が有名ですが、ナバホにもその技法は昔から伝えられていました。ナバホのスティーブン・ベガイは、 その第一人者の超有名な受賞歴も多いトップアーチストです。ホピのオーバーレイは断面が鋭いのですが、スティーブン・ベガイの作品はなめらかに磨かれてい て、優しい感じです。つけていてもフィット感が素晴らしいですよ。彼の作品は非常に手が込んでおり、価格も非常に高く、現地で数千ドルクラスのものも多数 あります。日本でもファンが多く、よく取り上げられています。ターコイズがついたものはとびきり高い(ブレスレットで10万円以上確実って感じです)アーチストです。フルネームはSteven Joe Begayなので、SJBの刻印が入っています。かなり格上のアーチストなので、振り分けられるターコイズもかなりいい石ばかり。最近は病気がちで入院し たりと、数はあまり作っていないようです。

ラス・アン・ベガイ

ラス・アン・ベガイはアリゾナ州フェニックスで生まれました、彼女の父は彼女がナバホ語だけを話して成長したニューメキシコから、居留地の伝統から逃れて、近代的に彼の子供たちを育てるために、アルバカーキに引っ越したそうです。彼女は、彼女の母と彼女の姉妹からシルバージュエリーの作り方を学びました。ラスは高校卒業後、シルバースミスとなり、単純な装飾から始めました、彼女には現在50才を超え、1人の娘(Desbah)がいます。彼女の娘にはシルバーワークを教えたそうですが、娘さんは別の道(エレクロトニクス)に興味があるらしいです。
ラスと彼女の夫は、現在ではニューメキシコに住んでいます。作品の幅は広く、最もオーソドックスで女性的な優しいデザインが多いです。

エマ・ビッグハンド

エマ・ビッグハンドは、ニューメキシコ州のグロウウンポイントの近くのナバホ居留地の南東で生まれました。彼女の兄や姉もシルバースミスで、彼女に強い影響を与えました。エマはシルバージュエリーの技術を両親から習い、シルバースミスへの道を歩み出ししたが、それは1984年のことです。銀と石の基本的な持ち味を使い、エマは非常に素晴らしい作品を、身につける人の喜ばせるように制作しているそうです。基本的にゴツメのクラシックタイプの作品ですが、女性らしく非常に作りが細やかで丁寧なので、Koyukiでも人気があるアーチストです。今後は夏だけしかジュエリーを作らず、大学に戻って勉強するということです。アーチストとして油の乗りきった40代なのに、あちらの方は思いきったことしますね・・。

トーマス・カルセッタ

カルセッタさんはKoyukiのカスタムオーダーの大半を製作しています。最初に断っておきますが、彼は純粋なナバホではありません。ですが50年以上ナバホの居留地に住み、娘さんたちのお婿さんはみんなナバホ。居留地ではジュエリースクールで子供たちに教えており、お弟子さんも結構います。彼の技術は相当に高く、ネイティブの巨匠たちよりも仕上げは丁寧で美しいです。お客様のオーダーどおり仕上げようとしてくれます。Koyukiも当初、ネイティブのアーチストにカスタムオーダーを入れていました。しかし完全にお任せで作るのにはいいのですが、リングサイズは平気で違うし、石は違うのをセットするし・・というのが多発して、日本人のお客様のカスタムオーダーではトラブルが多くて困っていました。
一般にアーチストは自分ではターコイズを入手せず、ディーラーから渡された、すでにカボチョンになった石で製作するのですが、カルセッタさんはそもそも相当のターコイズマニアであり、自分で塊からカットして切り出すところからやりますので、「石から選びたい」という日本のお客様のニーズにマッチしたということもあります。普通のターコイズディーラーでは入手できないレベルのターコイズも、蛇の道は蛇ということで彼なら鉱山オーナーと直接交渉して探し出してくれるのです。そんなわけでKoyukiのカスタムオーダーの石はすべてカルセッタさんが所有しているか、カルセッタさん経由でこちらで買い取ったものです。
→在庫の作品例はこちら カスタムオーダーはこちらで。リング ペンダント ブレス他

デルバート・ゴードン

デルバート・ゴードンは1955年生まれ。デリック・ゴードンの叔父で、高名なナバホのジュエラーです。彼の凄さは誰にもジュエリー作りを習っておらず、独学で自分のスタイルを作ったことです。甥のデリックは彼の弟子なので、非常に作風は似ています。特にエンボスといって裏から打ち出す技法は、1930年代のフレッドハーベイ時代によく使われたのですが、彼はそれをさらに洗練しています。基本的にはクラシックでトラディショナルな印象のものが多いのですが、非常に丁寧に作り込んであって仕上がりが綺麗です。イニシャルはかなり凝ったスタンプを使用しています。Koyukiでも人気のため、ブログに新着情報を出すだけで売れてしまいますが、今後は点数を増やしていく予定です。

デリック・ゴードン

デリック・ゴードンは1971年生まれ。30歳の半ばを過ぎた、いまが脂ののりきったナバホのトップジュエラーです。叔父である高名なデルバート・ゴードンからジュエリー作りを学び、1990年からジュエラーとして働き始めました。とくにこの5年で頭角を現して確固たる地位を築き、すでに受賞歴も多いです。クラシックなスタンプが得意で、全体に重厚なイメージですが、リーブス兄弟などよりは繊細で曲線が多い感じです。また、仕上げの良さは特級レベルで、粗っぽさはまったくなく、非常に丁寧に時間をかけて作っています。

アンディ・カドマン
ダレル・カドマン
ドノバン・カドマン

故ゲーリー・リーブス、サンシャイン・リーブスには、名字の違う、つまりお父さんの違う兄弟がいまして、それぞれみんな一流のシルバースミスになっています。アンディ・カドマン(1966年生まれ)、ドノバン・ガドマン(1968年生まれ)、ダレル・キャドマン(1969年生まれ)の順です。カドマン兄弟はリーブス兄弟よりも少し若いです。(ゲーリー1962年生まれ、サンシャイン1964年生まれ)
刻印はドノバンはフルネーム、ダレルはD.Cadmanと羊の刻印、アンディはシンプルにA.CADMANです。誰もクラシックでトラディショナルで、作風も似ています。
→作品例はこちら ダレル アンディ

ハロルド・ベセンティ

ハロルド・ベセンティも、ニューメキシコ州のグロウウンポイントの近くのナバホ居留地の南東で生まれました。シルバースミスとしてはかれこれ10年のキャリアがあります。3人の子供がいます。エマ・ビッグハンドのテイストと似ていますが、これは一緒に仕事をしているからです。ハロルドは、ターコイズとシルバーを使って伝統的なアンティークスタイルでスタンプ技法を用い、重厚なイメージを作り出します。得意はブレスレットやリング、ピン、だそうです。仕事が忙しくないとき、ハロルドはいつも音楽を聴いています。

ジェイ・リビングストン

ジェイ・リビングストンは、ナバホの超有名アーチストであるジェイク・リビングストンの息子です。1979年生まれ。 まだ20代中頃の若さながら、その卓越した新しいセンスは非常に注目され、受賞歴も多数。まだ独身ということですが、彼のジュエリーはひとつひとつをとんでもなく時間をかけて制作しているので、数は多く作れません。お父さんのジェイクはインレイで鳥などをもの凄く細かく入れ込んだ、まさにアートのようなジュエリーを作りますが、ジェイは細かなスタンプとオーバーレイという、父親とはまったく違ったものを作っています。またデザイン自体も非常に前衛的なモノも多く、いままでのインディアンジュエリーの枠を超えたものを作ります。非常に時間をかけて制作しているので、数はあまり入ってきませんが、 不定期に入荷できるようになりました。 現地でもとても人気があるため、なかなか割り当てが回ってきません・・・・。価格もかなり高いです。

カルビン・マルチネス

カルビン・マルチネス。この名を聞いたことのある人も多いことでしょう。 1960年生まれ。ナバホのトラディショナルなシルバージュエリーを製作する達人です。ハイグレードのターコイズのみを使い、クラシックで重厚な作品をモットーとします。 彼の作品=インディアンジュエリーの本道といえるものです。特に大きなターコイズが大きく、全体的に大きなサイズのジュエリーが多いようです。非常に多くの受賞歴を持ち、日本でもよく知られていますが、彼に特注して厳選されたハイグレードのターコイズを使用した作品を製作していただいています。 見ていただければ素晴らしさがおわかりいただけるはずです 。価格も彼の作品としてはかなりお安く設定しています。

レオナルド・ネズ

◆1993-Best of Show, Best of Craftsman, Best of Bolo/Bucket set, Santa Monica Arts & Crafts
◆1994-Gallup Ceremonial, Second Overall for coral necklace, earring, and ring set
◆1994-Amarillo Arts & Crafts, salt & pepper shaker, cream bowl & spoons won Best of Craftsman & Best of Show

などの数々の受賞歴を誇るレオナルド・ネズ。すでに彼の作品は現地でも非常に高価な部類になっており、しかもあまり数を多くは作っていないようです。日本ではまだほとんど見かけることはないですが、現地では非常に高く評価されている、才能にあふれたアーチストです。非常に寡黙な人ですが、9歳の娘ベティリンと遊ぶことを至福の喜びとしているそうです。
「わたしの作品のインスピレーションは、わたしの作品を愛してくれるすべての人、そしてわたしの愛する娘によってもたらされている。教会で腰掛けているときなども、耳元でひそひそとデザインのインスピレーションがささやかれるときがある。しかしもっともヒントを与えてくれるのは娘だ。」彼の作品はシンプルで力強く、そしてそのたくみなオーバーレイなどのシルバーワークで知られています。現代のインディアンジュエリーとしては最高レベルに達していると思います。

ゲーリー・リーブス(1963-2014)

2014年7月没。ゲーリー・リーブスの作品は、日本の有名ショップでも販売されているので、 見たことがある方もいらっしゃると思います。日本での平均的なプライスは、 存命の時でだいたいペンダントの小型のもので3万円後半、大型のナンバー8ターコイズ付きだと15万円ほどになり、ターコイズを使ったブレスレットで、細身のものだと4万円前後からやはり大きなものでは15万円くらいしていましたが、亡くなられたあとに日本どころかアメリカでも暴騰しています。

インディアンジュエリーのアーチストの中でも、もっとも有名で、高価な部類にはいると思いますが、現地の価格も高いです。彼の作品の特徴は、見事なスタンプワークにあります。非常に手の込んだシルバーワークで、よくこんな重厚な感じに作れるな・・と本当に感心してしまうほどです。日本の雑誌やムック本で「インディアン・ジュエリー」の特集があると、必ずと言っていいほど登場しますが、もちろん本場でも非常に有名で、いままでたくさんの賞を獲得し、美術館にも作品が飾られています。1962年にニューメキシコ州で生まれました。一族もまたシルバースミスです。リーブス兄弟の他、お母さんが離婚して再婚したあとの父親違いのカドマン兄弟もいて、みんな仲良く作風も非常に似ています。彼の作品はオールドスタイルで比較的ごついものが多く、男性向けが大半ですが、サイズさえ合えば女性がしても迫力満点。いずれにせよ、その丁寧なシルバーワークを身につけると、安心してしまうような気分になってしまいます。

サンシャイン・リーブス

ゲーリー・リーブスの弟である、サンシャイン・リーブス。 本名はダニエル・リーブスです。1966年生まれで、ゲーリーの4歳下になります。以前は一緒に仕事をしていたそうですが、現在は独立しています。 非常に多くの受賞歴を誇り、いろいろなミュージアムや大学に彼の作品は陳列されています。雑誌やマスコミにも頻繁に取り上げられる彼の作品は、兄のゲーリー・リーブスと同じ、クラシックで重厚なテイストともに、見て頂くとわかりますが非常に繊細で、正確という感じがします。ゲーリー・リーブスのほうがある意味、剛胆で荒っぽい部分が魅力であるのに対し、サンシャインは極端な話、繊細で細やかな女性的なイメージもあるほどです。価格的にはゲーリーよりも高いものが多いです。 最近日本でも非常に人気で、ゲーリーと比べて制作点数が少なめのようですが、Koyukiではまとめてオーダーし、しかもグレードの高い素晴らしいターコイズで作品を仕上げてもらっています。今後もなるべくお安くどんどん掲載していきます。 すべての作品にフルネームとSTERLINGの刻印が入っていますが、たまに打ち忘れもありますね・・・

ボニー・サンドバル
ディーン・サンドバル

ボニー・サンドバルと、ディーン・サンドバルは兄妹です。お母さんのアルタもアーチストで、いまでもニューメキシコのアルバカーキで大家族で暮らしています。彼らはシルバージュエリー作りを、もちろんお母さんから習い、お母さんもおばあさんから習いました。代々ずっと続く家なのです。彼らのジュエリーは、超有名アーチストのような重厚で、高価なものが中心ではありません。どちらかというと手頃で、普段でも気楽に使えるものが主です。しかしハンドメイドで一からしっかり作っており、ネイティブアメリカンの代表的なアーチスト1200人を紹介した本にも出ています。ちなみにジュエリーを作っているネイティブアメリカンは数万人いる中での1500人です。ディーンは元ロデオライダー。奥さんと幼い3人の娘に恵まれ、アウトドア大好きという人です。ロデオは「年を取りすぎた!」ので引退したそうです。ボニーは、1986年からシルバージュエリー作りをはじめました。働くのは大好きだが、働き過ぎることはしない、がモットー。自然なかたちで生きている家族なのです。

ハーマン・スミス

ハーマン・スミスはナバホのトップジュエラーの1人です。クラシック&トラディショナルなデザインを得意とする彼は、1964年生まれの46歳。レイ・トレーシーと一緒に仕事をしていた時代もあるということで、オールドスタイルには定評があります。特に綺麗なスタンプワークの作品が多いです。HSというイニシャルを打っています。

カーク・スミス

カーク・スミスは、急に有名になり始めたというか、注目を浴びて有名になったアーチストといえるでしょう。世界的に有名なインディアン・ジュエリーのアーチストであるHARRY MORGANの義兄弟にあたるそうです。が、カークはHARRY MORGANからジュエリーの技法を学んだわけではなく、従兄弟のHerman Smithから学んだそうです。彼の妹のベティも才能あふれる有名なアーチストです。
彼の作品の特徴は、そのフィニッシュの仕方にあると言われます。つまりビンテージフィニッシュといわれ、ある技法を用いてあたかも年代を経たビンテージのジュエリーのように綺麗に仕上げるのです。なのでカーク・スミスの作品をお買いあげになった場合は、銀磨きで磨き上げたりせず、そのテイストをそのまま楽しむようにしてください。重厚で美しい渋さが楽しめるはず。彼のデザインはクラシカルで、昔のインディアンジュエリーのモチーフを生かしたものが多く、ファンも拡大しているそうです。

ゲリ・タレイ

ゲリ・タレイは有名アーチストと言うわけではありません。それどころか本職のアーチストでもありません。ナバホの血は入っておらず、アパッチなどの部族のミックスだそうです。最初に知り合ったとき、彼女はまだ奨学金で大学に通う学生でした。非常に知的レベルが高いのはメールの文章を見ても完璧な英語なのでわかるのですが、非常に分かり易く書いてくれるのでありがたいです・・。海洋生物学を学んで優秀な成績で卒業したのですが、やはり就職が非常に厳しく、臨床学を学びなおすために大学に戻り、無事に卒業し、現在は心臓血管科で名高いフロリダ病院で働い ています。けっして裕福とは言えないおうちだったので、学資の足しにとジュエリーを作っていたのですが、カジュアルな、革とストーンを組み合わせたブレスレットとチョーカーにセンスを感じ、Koyukiでも売って売って売りまくり、かなり学費には貢献したと思います。オーストラリアに海洋実習に行くときは、前払いでたくさん作ってもらい、お客様にもご協力頂いて機材を調達したのが懐かしいです・・。お母さんのアバともメールでやりとりしましたが、一族はやはりジュエリーづくりで生計を立てていて、子供の頃からジュエリー作りの才能があったそうです。
ナチュラルな革と、自然石の調和がとても優しい感じで、価格も手ごろなのでお一人で何色も購入してコーディネイトしたり、カップルで付けたりしているお客様もいらっしゃいます。男女兼用です。ただし革なので、ずっと長く持つというわけではないことをご了承くださいね。 ブレスレットやネックレスには革の色と同じビーズがついていて、これで手首回りを調節するため、誰にでもピッタリになります。金属アレルギーの方でも楽しめます。ターコイズはすべてスタビライズドのチャイニーズです。彼女の病院勤務とともに終わったのですが、最近はやや時間もでき、そもそも作ることが大好きだったこともあり、また再開しています。もっともたくさんは作れないのですが・・・。

スティーブ・イエローホース

彼はアメリカでは相当に有名で、いろんな本やビデオにもよく出ているアーチストです。が、日本ではあまり知られていません。
それは、なぜか。私が思うに、彼の作品は、ゲーリー・リーブスをはじめとする、いわゆる「ごつめの昔からのインディアンジュエリー」ではなく、非常に洗練された繊細で、彼独特の優雅なデザインなので、一般的に想像する”インディアンジュエリーなるもの”とは少し異なっています。素人さんにはなじめないからかもしれません。イエローホースと言う名前の作家はたくさんいますが、それは彼の一族が兄弟が多く、しかもアーチストの家系だからです。彼の祖父は12人の子持ち。彼自身も12人兄弟!! 奥さんはトニという名前で先生をしているそうです。兄弟や親戚にも数多くのアーチストがいますが、知名度という点ではスティーブ・イエローホースが群を抜いています。スティーブ・イエローホースは1954年にテキサスで生まれました。得意なモチーフは、蝶、クロス、水、岩、葉、波、雲など、やはり自然との調和をイメージされているそうです。
彼はいいます。ジュエリー作りは自分が誰かと尋ねる道であると。まさに禅問答のような彼のジュエリーに対するスタンスです。余談ですがお父さんは太平洋戦争に参加されたそうです。「ウインド・トーカーズ」に出てくるナバホの情報部員を思い出しますね。